心理的安全性とは?Google推奨の生産性が向上するチーム作り

心理的安全性

Googleがチーム作りで推奨している「心理的安全性」とはそもそも何なのか?どうすれば高まるのかを紹介します。生産性に悩んでいるマネージャーやリーダーは参考にしてみてください。

心理的安全性とは

心理的安全性とは「メンバー一人ひとりが安心して自己開示できるような状態」のことを指します。

わかりやすく言えば、チーム内で思ったことを発言したり自分をさらけ出しても、職場での人間関係を損なうことはない思える雰囲気があるか否かを指します。

Googleが、生産性の高いチームの特性を調査した約4年もの年月をかけた社内実験「プロジェクト・アリストテレス」によって、「心理的安全性が高いチームは生産性が高い」との調査結果を公表し話題になりました。

Googleが出した生産性が高いチームの結論

  1. 1.チームの「心理的安全性」が高いこと
  2. 2.チームに対する「信頼性」が高いこと
  3. 3.チームの「構造」が「明瞭」であること
  4. 4.チームの仕事に「意味」を見出していること
  5. 5.チームの仕事が社会に対して「影響」をもたらすと考えてること

プロジェクト・アリストテレスでは、生産性の高いチームに5つの共通項を見出しました。そのなかで最も重要視されるのが「心理的安全性」です。

心理的安全性は、2~5全ての土台になっていて、心理的安全性が低いと、メンバー間の信頼は生まれず、役割や仕事を与えられても意味を見出そうとしません。仕事が社会に対して影響をもたらしている、との考えにも至らないでしょう。

生産性の高いチーム作りを行うときには、まず心理的安全性を高める仕組化から始めることをおすすめします。

メルカリやGEなど様々な企業が実践

2018年6月に株式上場したフリマアプリ大手の「メルカリ」や米国超大手企業の「GE(ゼネラルエレクトリック)」も、心理的安全性を高めるチーム作りを心がけています。

心理的安全性に注目が集まってからまだ日が浅いので、導入企業は今後も増えていくはずです。

生産性が向上する理由

メンバーが主体的に行動する

心理的安全性を高めることで、意見を言いやすい環境が構築されます。人間の本質は自己保存です。

意見を言うと怒られるのではないか?無知を晒してしまうのではないか?と恐怖を与えることがなくなるので、 メンバーは主体的に発言し、行動します。

また、動き方がそもそもわからないメンバーにとっても、先輩にアドバイスを気軽に求めることができます。

報連相が活発になる

報告・連絡・相談は、部下にとって心理的不安が発生する行為です。

心理的安全性が高いチームは、心理的不安が軽減されているので、恐れることなく報連相ができます。特に、ネガティブな内容だと顕著に表れます。

報連相がうまくいっていないチームがあれば、心理的安全性が低いのでは?と疑ってみましょう。

マネージャーの心理的安全性が高まる

マネージャーやリーダーには、メンバーを叱ることや方針を変更するなど「メンバーに嫌われるのではないか?」と不安になる判断・決断をする場面が多々訪れます。

チームの心理的安全性が高ければ、互いに信頼し合っているので、不安がない状況下で意見を出し合えます。

心理的安全性の作り方

  1. ・ミッションとバリューの策定と運用
  2. ・1on1ミーティングを行う
  3. ・ストーリーの共有の仕組化
  4. ・フィードフォワードとフィードバック
  5. ・サーバントリーダーを量産する

1.ミッションとバリュー

メルカリのミッション メルカリのバリュー

メンバーが同じ目的のために同じ方向を向いたり、会社や個人の目標を決めたりするためには、明確なミッションとバリューが必要不可欠です。

メルカリのミッションは「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」バリューは「Go Bold」「All for One」「Be Professional」です。

ミッションを達成するための3つのバリューを設定し、会社の価値基準をわかりやすい言葉で表現することで、メンバー全員が意識しやすくしています。

  1. 4.チームの仕事に「意味」を見出していること
  2. 5.チームの仕事が社会に対して「影響」をもたらすと考えてること

「どの方向を向いているのか」は、心理安全性を語るうえで欠かせない要素ですし、チームの生産性向上を生み出す4,5の項目もミッションバリューでチームに明示できます。

2.1on1ミーティング

1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で面談を行うことを指します。1対1で同じ空間にいると、部下が本音を漏らしやすくなり、どこに不安を抱えているかがわかります。

ミーティング内容はメンバー主体の話

1on1ミーティングは、マネージャーではなく部下のためにあります。したがって、ミーティング内容はメンバー主体の話にしましょう。

メンバー主体の話であれば、仕事の話はもちろん、プライベートのことでも構いません。むしろ、プライベートの話が部下が出てきたら、心理的安全性が高い証拠にもなります。

週1回で行うと効果的

1on1ミーティングの頻度は、週1回をおすすめします。回数を増やすことでザイアンス効果(単純接触効果)が生まれ、心理的安全性が高まります。

また、1on1ミーティングを心理安全性を高めるために行うのであれば、その影響の範囲をどんどん広げていきましょう。

例えば、はじめはマネージャとメンバー全員、そこに信頼関係が生まれてきたら、マネージャーは上位層だけ、上位層がそのほかのレイヤーをみるなどして、個々人で心理安全性を高められるような工夫を行います。

※ザイアンス効果とは接触頻度が多いと親しみを感じやすくなる心理効果を指す

▶【ザイアンスの法則】距離感を一気に縮める

3.互いのストーリーを共有

ポジティブな協力関係を築くには、仕事だけではなく、個々人の物語の共有が欠かせません。

メンバー同士深くつながるには、自分の物語を話しあうことが重要です。信頼を築く最も簡単な方法は、互いをもっと知ることです。他人の人生を知るほどにその人を嫌いになったり、疑う可能性は小さくなっていきます。

できるマネジャーは、自分のストーリーを曝け出し、メンバーの様々なストーリーも把握しています。更にできるマネージャーは、チームに様々な人物のストーリーを共有し、仕事以外での強固な絆を自然に作っていきます。

ライフストーリーシートを作成

互いのストーリーを把握するための仕組化として、幼少期から今に至るまでのストーリーを記入する「ライフストーリーシート」を作成し、メンバー間で共有しましょう。

【項目例】

  • ・幼少期
  • ・小学~中学
  • ・15歳~20歳
  • ・20歳~30歳
  • ・30歳以降
  • ・強み
  • ・弱み
  • ・今までに褒められたり、認められたりしたことで一番心に残ったもの
  • ・学習スタイル

社内広報新聞を作る

大きな会社などで見受けられる社内報は、実はストーリーテリングに非常に優れています。

コンテンツそのものが複数のつながりを強制的に生みだす仕組みになり、さらに新聞観覧者との会話のきっかけになります。

「そんなものほとんどの人が読んでないよ」と思う方はたくさんいますが、逆の目線でみると見ている人は必ずいます。

共通の体験を行う

飲み会(ランチ)やレクリエーション、研修など、本業務以外での活動でともに時間を過ごしてみましょう。

雑談のなかで人となりや過去の出来事など、非日常でしか聞くことのできない会話が発生し、お互いのストーリー共有になります。

4.フィードフォワードとフィードバック

「これから何をしたら良いのか」「行ったことの良かったことや改善点は?」そんな想いをメンバーが持つうちは、心理安全性は低い段階です。

メンバーそれぞれに目標を持たせ、達成プロセスを明確にし、メンバーが行った行動に対してフィードバックを行いましょう。

基本的な質問はGROW

  • G(ゴール/目標) 目指していること
  • R(リアリティ/現実)進捗や達成までのプロセス
  • O(オプション/行動計画)目標達成に必要なスキルを鍛えるために何をするか
  • W(ウィル/意欲)いつから始めるか

フィードフォワード・フィードバックで行う質問は、GROWを心がけましょう。最も重要なのは、ゴールを具体的に決めることです。

例えば、ゴールを「分析ができるようになる」と抽象的に決めてしまうと、ゴールが曖昧なので、そのために何をするべきか見出しづらくなります。

「次の社員研修で講師をやる」など、具体的にゴールを定め、逆算し、行動目標に落とし込んでください。

5.サーバントリーダーを量産する

  1. 【データが導き出したGoogleの「最高の上司」】
  2. 専門知識を持った良いコーチである
  3. チームを勢いづけ、マイクロマネジメントをしない
  4. 部下が健康で過ごし、成果を挙げることに関心を払う
  5. 生産的かつ成果主義である
  6. チームの良き聞き手であり、コミュニケーションを活発に取る
  7. 部下のキャリア形成を手助けする
  8. 明確なビジョンと戦略を持つ
  9. チームにアドバイスできる技術的な専門知識を持つ

Googleのチーム実証実験「プロジェクト・オキシジェン(プロジェクト・アリストテレスとは別チーム)」では、生産性を高める理想の上司像もデータ解析されました。

最高の上司は、自分自身が直接的にパフォーマンスを発揮する人ではなく、部下が最大の成果を挙げるための環境構築ができる人を指すようです。

近年では「サーバントリーダーシップ」とも呼ばれる『部下の成果と成長』中心のマインドを持つリーダーをたくさん増やすことで、職場の心理的安全性がより高まっていきます。

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